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最上の自然塗料 漆(うるし)

最上の自然塗料 漆(うるし)

漆は最古の塗料として、温かみのある美しい色合いと深いつや、工芸品として繊細な表現の可能性、
そして自然塗料として最も強いといわれる堅牢さを貴ばれ、長く愛されてきました。
日本ではお寺や神社の建築、美しい飾り物などで古くから珍重され、親しまれる漆製品ですが、
西欧の寺院においても大航海時代に日本から伝わったのち、
数百年以上も大切に保管されてきた聖遺物が多く残されており、
祈りの仏具に用いるのにこれ以上ふさわしい塗料はありません。
匠工芸ギャラリー禅は、日本の工芸士の手仕事による天然の本漆塗りにこだわっています。

サステナブルで生きている自然塗料

漆の木から採取される漆は、土から生まれて土に還る天然の素材です。
固まった塗膜は熱、湿度に強く、堅牢かつ強靱で、ガラスと同じぐらいの硬度があると言われています。
酸やアルカリ,耐薬品性にも優れ,天然で高い抗菌性を持ち、乾くとアレルギーを引き起こすことのない安全・安心な素材です。様々な素材に塗ることのできる漆ですが、特に木材との相性が良く、木材に時間をかけて塗られた漆の塗膜は、木と一体化し、呼吸を続けながら、数年数十年の時間の中では、その塗膜がより強く、また美しいツヤが深まっていきます。

漆の木から上手に少しずつ採取することで、毎年繰り返し採取することができます

漆の木から上手に少しずつ採取することで、毎年繰り返し採取することができます

時代を超えて愛される温もりのある工芸美

江端 俊夫 作 椀

江端 俊夫 作 椀

「漆」は、漆の木より採集された樹液によって木を守る、防水・耐久のための生命をもった自然の堅牢な塗料や接着剤ですが、 日本ではその美しいデザインや色使い、そして匠の技をして数千年の長い歴史につちかわれ、伝統工芸の仕事のなかで美しいお椀や家具などの工芸品として愛用されてきました。
「漆」のしっとりとして華のある美しさは、日本人の美の感性そのものだと思われます。
  生きている漆塗りの表面は、その色艶の美しさや堅牢さが歳月とともに増してゆきます。

縄文時代から愛されてきた漆の歴史

世界最古の漆器は日本にあり、北海道函館市で見つかった漆を使った約9,000年前の副葬品です。
これは縄文時代前期にあたり、椀・皿・鉢や壺、土器などの器の類、弓などの武器、櫛や腕輪などの装飾品と、縄文時代の漆製品は多岐にわたっていました。そして、赤色漆製品が多く作られているのも、この時代の特徴だ。縄文人にとって赤は、特別な色だったといわれています。
血や魂の色で、魔除けや復活・再生、隆盛を意味したのではないかという研究もあります。

工芸士の手仕事でのみ塗ることのできる本漆

天然の漆の木から採取された漆の樹液が原料である漆は、一定の温度と湿度のもとに固まりますが、天然の材には固まるまでの時間に個体差があり、気候、天候によっても変わります。また漆独特のツヤは、固まる時間の長さや温度湿度の条件で変わるほど繊細です。また漆の粘度や色の出具合など、漆塗りの表情を決める風合いも、その時々によって異なります。 そのため漆塗りの工芸士は、漆の個性を見極めながら、一つ一つ、一段階一段階丁寧に塗りと乾きを重ねていきます。これは機械や工場生産では管理ができない天然の漆ならではの特性のため、現在ではウレタンなど合成塗料に数パーセントの漆を混ぜた塗料が開発され、工場生産も行われていますが、漆本来のツヤの美しさ、堅牢さ、深み、風合いは、天然の漆だけで塗られる本漆塗りにはかなわないものだと考えています。